竜化理学科
エミュール学園大学 竜化理学科の研究報告ページ。
講義資料[編集 | ソースを編集]
竜化学基礎[編集 | ソースを編集]
竜化とは、竜の力を借りることによりその絶大な力を得る術である。
本講義では、人と竜の絆の発露ともいえる竜化についてを学ぶ。
第1回 竜化とその条件[編集 | ソースを編集]
前提条件[編集 | ソースを編集]
絶大な竜の力を行使することが可能な竜化であるが、その力は無条件に得られるわけではない。代表的な制約として、竜の血と呼ばれる特殊な血脈を受け継いでいることが挙げられる。竜の血は、かつての第一次封魔大戦時に行われたエリュシオンと巫女イリアの「原初の契約」により発せられた光が人々の中に溶け込んだものであると伝えられている。
竜の血を現代に受け継ぐ血脈がどの程度現存しているかは不明瞭であるが、アルベリア王家に連なる者たちは数少ない竜の血の継承者である。アルベリア王家の発祥は英雄アルベリウスであり、アルベリウスもまた竜の血をひいていたと考えることができる。
一方で、アルベリウスが可能であった複竜契約(複数の竜との契約を行い、複数の竜の姿へと竜化が可能)は約300年にわたる王家の歴史の中での再現例の記録がほとんどない。唯一の事例が当代のアルベリア第7位王子のユーディルによるものであり、このことは竜化に必要とされる資質に何らかの未解明の余地があることを強く示唆している。
竜の血は竜化に必要な最低限の資質であり、それが必要十分条件を満たすものではない。さらなる要件として、竜化を望む竜との契約を行うことが必要とされる。契約は契約者と竜との間に楔として打ち込まれるものであり、契約の破棄には相応のリスクを伴う。このことからも、竜との契約には相応の信頼関係を築くことが求められ、絶対的な強者である竜の側の承諾を得ることが竜化における条件であると言ってもよい。なお、このような契約を巫女イリアの行った原初の契約との区別を行う文脈などにおいて、特に絆の契約と呼称することがある。
物理的条件[編集 | ソースを編集]
前提条件を満たした上で、実際に竜化を行う際にはある種の物理的条件があることが知られている。そのひとつが竜化対象との「距離」である。
タイタン号沈没に端を発するアルベリア、新アルベリア、ディアネル帝国の国家元首級同時遭難事件においては、竜の血をひく正当な契約者たちが現場に居合わせながらも、竜化により事態の打開を行わなかったことが記録されている。これは遭難先の無人島においては竜化が不可能であったことを意味すると考えられ、随伴しなかった竜への竜化が不可能であったことを示唆している。
つまり、竜化には何らかの形で竜の存在を感じ取れる必要があり、遠隔の地に存在する竜の場合はそれが不可能な場面があると考えるのが妥当である。このことについては、竜化に必要な竜のマナを感じ取れることが条件ではないかという学説が提唱されている。
例外条件[編集 | ソースを編集]
竜との契約を行った存在が近くにいるとき、その存在と意思を通わせたもの(いわゆる仲間)もまた竜化が可能となるという現象が確認されている。顕著であるのは先述の第7位王子であり、彼とともに戦う仲間たちは彼の契約する様々な竜への竜化が確認されている。
この現象は契約者が、竜と仲間とのマナの交換のハブとして働くものであると考えることが可能である。しかし特筆すべきは竜の血を持たない者(正確には、王家の血筋ではない者)やフォレスティア、戦闘人形などの無生物にまでその効果が及ぶことである。このことは、竜化という「変身行為」に必要なのが竜の血であるというわけではなく、竜と契約しその力を行使する(すなわち、人と竜の双方のマナに関与し制御すること)に必要なのが竜の血であるということを示している。
また、たとえ竜の血による契約の条件を何らかの形でクリアしたとしても、竜化の負荷に耐えうる資質や肉体を持たない場合には、その肉体が崩壊するか人ではないモノへと成り果てるであろうという見解がアルベリア王家の者から出されている。また非公式ながら、王家の血筋でありつつ契約の負荷に耐えない者の契約を肩代わりする術の存在も明らかとなっている。
ただし基本的には契約を行える存在は竜の血を持ち、竜の血には肉体を強化する要素があるとされていることから、こうした術の使用例は少ないと考えられる。
第二回 竜化のメカニズム[編集 | ソースを編集]
竜化が実際にどのような仕組みをもって人の姿を竜たらしめるかは、未解明な部分が多い。実質的に竜化がアルベリア王家の秘する技術であったという事情もあり、その実例が少なかったためでもある。しかしながら、このような少ない事例からある程度の推測を行うことはできる。
通常の「竜化」[編集 | ソースを編集]
人の姿が竜のものとして変化するような一見すると超常とも解される現象は、明らかにマナが関与しているといえる。異界からの黒いマナが様々な生物、ときにはドラゴンの肉体すらも変質させることは特異な例としてよく知られているが、黒いマナに限らず、マナは心身の健康状態などの形で生物に大きく関与している。
竜化もまた、黒いマナによる肉体の変質と同様、マナが人を一時的に竜の姿へと変容させるものである……とする解釈は、竜の力を借りるという表現からしても妥当性のあるものである。
しかし、竜の姿は千差万別であり、その多くが人とは異なる骨格構造をしている。一般的に竜化した者は人の意識を残しているとされるが、その場合においても身体の挙動に何らかの形で竜の側への意識のすり合わせが行われていると考えるのが自然である。
竜化では、一般に竜化の可能な時間が限られることが知られている。おそらく竜化という変容に耐えられる
真の竜化[編集 | ソースを編集]
真の竜化と呼ばれる竜との一体化の術が知られている。これは人が竜のマナを得てその姿を変容させる通常の竜化に対し、人が竜の肉体そのものと一体化するという点で大きく異なる。この場合、竜化に際して行使できる力は通常の竜化よりも大きく向上し、あるいは元の竜の力よりも大きく向上することがアルベリアの第一位王子、レオニードと契約竜マーズの間にて確認されている。
一方で、この「真の竜化」とは竜に対して人がマナとして一体化する術であるという見方をすることもできる。先述のレオニードの事例や、魔神の肉体を封じていたアルベリウスの事例から、契約者の意識が主体でありつつも、その肉体はほぼドラゴンのそのものであると確認することができる。特にプルートーの遺骸からアルベリウスに由来するマナが抽出できたことからも、「真の竜化」の際には人の側がマナとして竜に力を与えているとも解釈の可能なマナの流れが生じている。非常に興味深く、今後の研究が待たれる点である。
竜化と形質変化